中谷哲郎のドイツ日記 Vol.3 2013年3月7日
ドイツプラスエネルギーハウスについて。
先日、弊社取締役の永井宏治が一般社団法人不動産協会さまの会報誌に「ドイツのプラスエネルギーハウス」に
関する記事を寄稿したところ、いろいろなところから反響がありました。皆さんの「プラスエネルギーハウス(
PEH)」に関する関心の高さがうかがえる反響ばかりでした。
そこで、このコラムでも少し、ドイツの「プラスエネルギーハウス」について紹介します。
ドイツにおけるプラスエネルギーハウスは、ダルムシュタット工科大学(2007年、2009年のソーラーデ
カスロン優勝校)など国内の様々な研究機関が開発に着手しているが、最も有名なプロジェクトが、2011年
12月に竣工したベルリンのPEHでしょう。
真四角の家に、真っ黒のフォルム。見た目も、そのスペックも想像をはるかに超えたプロジェクトだけに世界中
の注目を集めました。このPEHはドイツ連邦政府交通建設都市開発省(日本の国交省)が企画したコンペで、
シュトゥッツガルト大学建築関係研究所が設計を担当しました。
スペックは次の通りです。
構造:木造住宅2階建て
延べ床面積:136㎡
断熱仕様:セルロースファイバー+麻の断熱
熱還流率(U値):床、壁、天井 0.11
開口部仕様:3層ガラスアルゴンガス入り
熱還流率(U値):窓0.7
太陽光設備:屋根14.1kW(98.2㎡)、外壁8kW(73㎡)
省エネ設備:熱交換換気システム、ヒートポンプ式温水暖房システム他
この住宅はそのファサードから太陽光による創エネの部分にスポットが当たりがちです。確かに、年間の発電量は
1万6000kWhを超え、4人家族が使用する家庭内の電力だけでなく、電気自動車を年間2900km、電動自転車を
4000km使用しても電気が余るというバケモノのような家ですので、そこに注目しがちですが、そのベースには、
省エネ、つまりなるべくエネルギーを使わない住宅である必要があるのです。
前述のスペックでもご紹介した通り、U値性能は現行のドイツ省エネ政令基準の1/3程度の性能、暖房エネルギ
ーも一次エネルギー消費量で約24kW/㎡とこちらも現行の省エネ政令の1/3程度という高性能なのです。あく
までもベースである省エネ性能が担保されてこその「創エネ」です。いくら太陽光発電を搭載してもエネルギーを
浪費する家ではゼロエネルギーにはなりえないのです。