省エネ断熱改修普及のための日独連絡協議会 メールマガジン 【7月1日号】

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         省エネ断熱改修普及のための日独連絡協議会

           メールマガジン2013.7.5  VOL.3

 

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     日本における省エネ断熱改修マーケットの確立を目指して!

 

本日のメニュー

【Ⅰ】日独連絡協議会 代表 中谷哲郎「省エネ改修補助金開始」

【Ⅱ】ドイツ・エコセンターNRW主任研究員 永井宏治のドイツレポート

【Ⅲ】これからのセミナー・研修会のご案内

 

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※当メールマガジンは、当協議会会員以外に株式会社日本エネルギー機関、一般社団

法人日本エネルギーパス協会、一般社団法人クラブヴォ―バン会員の皆様にも無料配

信しております。配信停止希望の方はお手数ですが、本メルマガ末尾の配信停止・変

更箇所をご覧ください。

 

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╋■┛【Ⅰ】日独連絡協議会 代表挨拶 中谷哲郎 セミナーレポート

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省エネ改修関連の補助金、「エネルギーパス」を活用して207世帯分を申請

前回ご紹介した国土交通省管轄の省エネ改修補助金「住宅・建築物省エネ改修推進事業」

が6月26日に締切されました。私が代表を務める日本エネルギー機関でも、分譲マンショ

ン3棟の管理組合さんから依頼をいただき、申請のお手伝いをさせていただきました。

築40年以上の建物2棟と築23年の1棟、合せて207世帯分の補助金を申請いたしました。

 

補助金申請において、どのようにエネルギーパスを活用したかというと、「改修後の10%

削減根拠を示す」場合にエネルギーパスを活用しました。

エネルギーパスは、戸建て住宅だけでなくマンションなどの集合住宅でも評価できます。

 

続いて概要が発表されたのが、経済産業省の「既存住宅における高性能建材導入促進事業」

です。詳細は下記のアドレスからご確認ください。

 

http://www.zero-ene.jp/material/file/kenzai_kobo.pdf

 

簡単に同制度を概要をまとめると以下の通りです。

◆事業の対象 戸建て住宅、集合住宅の所有者、集合住宅の管理組合など。

◆事業の要件

以下の要件を全て満たす事業を対象とする。

①      既築住宅の改修において、SIIに登録された高性能建材を導入し、住宅全体の一

次エネルギー消費量の15%以上を削減すること。

②      改修は、「地域区分別施工部位組合せ表」により行うこと。

③     ②以外で改修を行う場合は、SIIに認められた計算式に則り、個別に住宅全体の一次エ

ネルギー消費量の15%以上を削減する計算式を添付し、申請すること。

④      補助事業に係る契約は本補助事業の一般公募開始後に行うこと。一般公募開始前の契約は

事前契約とみなし、これを認めない。

⑤      補助事業に係る工事は、補助事業の予約者決定通知が届いた後に着手すること。

予約者決定通知が届く前に着手した場合は、事前着工とみなし、これを認めない、など。

 

◆補助率及び補助額

① 補助率

補助対象経費の1/3以内とする。

② 補助金額

上限 150万円/1戸

 

 

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╋■┛ドイツ・エコセンターNRW主任研究員 永井宏治のドイツレポート

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ドイツの建築研究所であるエコセンターNRWの研究員で株式会社日本エネルギー機関

(私、中谷が代表)の取締役である永井宏治氏にドイツの省エネ改修の現状と問題点に

ついて解説いただきます。

 

省エネリフォーム推進のカギは情報

 

省エネリフォームと言うと、当たり前だが「省エネ効果」にのみ着目されがちだ。確か

に最も重要な要素だが、「省エネ」が全ての判断基準であるようにとらえられることが

多々ある。これはドイツ連邦政府が目標としている省エネリフォーム率向上を逆に妨げ

る要因のひとつとなっている。

 

政府として省エネリフォームを勧める根拠は、ざっとあげるだけでも10ほど存在する。

これらは大きく分けると「経済的メリット」「建物的メリット」「政治的メリット」の3

つのグループに分別することができる。

 

◆経済的メリット

冒頭登場した「省エネ」はこの経済メリットのカテゴリーに分類される。現時点でのラン

ニングコストを削減するだけでなく、将来的に上昇するリスクを持つエネルギー価格、す

なわち光熱費を小さくすることが目的となる投資の一種と言える。

 

省エネリフォームによる不動産価値アップも「経済的メリット」の一つだ。建築物への投資

額のうち新築が4分の1となり、既存中心社会となったドイツでは省エネリフォームをした、

あるいは燃費のいい新築が市場での目玉となってきている。視点を変えると、省エネリフォ

ームされていない建築物は今後もさらに賃貸・売買が困難となるのとも考えられる。賃貸業

者の立場からすれば、温熱環境の悪さや光熱費の高さから空家率が上昇し、収入が減少する

ことを防ぐ手段のひとつでもある。

 

◆建物的メリット

建築物として評価すると、断熱・遮熱対策により快適性のみでなく、躯体にかかる温熱負荷を

軽減することや湿害を防止することにより躯体自体の耐久性も増加する。その他、適切な換気

設備を導入することによって、建物使用者の対応によっては効率が著しく悪くなる開口部の開

閉に頼らず室内の空気を最適な状態に保つことも可能となる。

 

◆政治的メリット

最後に政治的な観点から重要となる根拠としては温暖化防止、資源節約、国内の雇用促進があ

げられる。

 

これまでに述べた省エネリフォームの利点をみると、連邦政府が目標に掲げた「ストックの省

エネ改修目標 年間2%のリフォーム率」を軽く達成しそうだが、残念ながら現状は1%弱にと

どまっている。その原因はどこにあるのだろうか。

 

その答えは、最初に指摘した「省エネ」という言葉にとらわれすぎているからではないだろう

か。言い換えると経済性が保障されなければ建物の所有者がリフォームに踏み切らないという

反面、経済性の計算が頭の中で間違っている、あるいは間違った情報源から伝えられていると

いうことが背景にある。

 

また、経済性以外の効果という情報も欠如していることが多い。省エネリフォーム対策の経済

性とは簡単に言うと、投資したコストが何年で回収できるかということである。例えば外壁へ

の湿式断熱が12000ユーロかかるとすれば、それによる年間の暖費用削減量800ユーロで燃料

価格が一定していれば、投資回収期間は15年となる。この期間の速い遅いを決めるのは当然所

有者であるが、ドイツ国内の省エネリフォームアドバイザーが顧客のサポートする時は、投資

期間が20年程度までであれば経済性はあると判断して話を進める。それよりも短ければなお良

いということになる。

 

湿式断熱の経済性を「15年もかかるのなら必要ない」と言わせるか、あるいは「12000ユーロの

投資で、エネルギー価格が上昇しなくとも20年間の年間利率が1.45%で4000ユーロのプラス」

と思わせるかの違いはその計算結果の伝え方次第である。また、12000ユーロのうち大抵は半分

程度が足場等の資材、人件費、仕上げ・塗装料となっているため、省エネ目的で支払うのは6000

ユーロ程度となる。ゆえに、外壁の修復が必要な状態であればそのついでに利益率5.03%で10000

ユーロの収益という考え方もできる。さらに、「家の中が快適になる」、「不動産価値があがる」と

いった理論で押せば容易にリフォームさせることができるようにも思える。

 

しかし、消費者の全てが正しい判断材料を得ているわけではない。こういったアドバイザーの仕事

は無料のものもあるが、通常のものであれば一戸建てでおよそ800ユーロ、そのうち400ユーロが

補助金で負担されるため、個人での負担は400ユーロである。これを短時間のアドバイスと調査報

告書に支払う価値があると認識すれば良いのだが、情報だけに大金は払えないと思う消費者も少な

くない。その場合、近隣の工務店に依頼するという流れになり、運が悪ければ悪質な型にはまって

しまう。

 

よく耳にするのは、窓を高性能なものに取り替えるだけで光熱費を30%削減できるといったような

話である。理論的に考えて、ドイツの一般的な住宅では躯体が原因となるエネルギーロスが70%、残

りは換気、温熱供給設備の効率といったものとなる。断熱が特にされていなければ、躯体から熱損失

のうち20%程度が開口部から発生している。単純に考えても全体で15%にも満たない。高性能窓を使

用しても熱損失が0になるわけではない。これでは高額な窓を入れても光熱費削減効果が小さく、「省

エネリフォームなんて高いだけで意味がない」といった意見が消費者から出てきてメディアにここぞ

とばかりに取り上げられるのも無理はない。

 

大手新聞社がKfW銀行(ドイツ復興金融公庫)の発表した、「リフォーム政策の経済性」という調査報

告書を誤って解釈して記載し、それがドイツ公共放送でも同様に伝えられてことにより建築業界が激怒

し、「ジャーナリズムの責任と影響力について熟慮したうえで執筆すべし。新聞、雑誌が読まれなくなる

のは当然。」と痛烈に批判したのは記憶に新しい。こういった問題は度々発生している。

 

原則的に高性能窓への交換の経済性は低くなっているが、これは単価が高いのと、光熱費削減の割合

が小さいことが原因となる。経済性の視点から言うと、年月を経て必要性がでてから交換するほうが

いいと言えるが、省エネリフォームは全体でコーディネートしてこそ意味がある。したがってアドバ

イスする側としては「躯体全体に断熱をして、窓だけは現状のままで」とは言ってはならないという

困難なテーマとされる。建築物理学的に見て、これまで内壁、床、天井、開口部全体から熱が出入り

していたものを、開口部だけに集中させるというリスクは、快適性が失われる。また結露をそこに集

中させるといった問題から避けるべきであるというのが背景にある。これは全体のリフォームできな

い所有者はするなということではなく、そういったリスクについての情報を伝える必要があるという

ことである。

 

新築と省エネリフォームに共通するのは、躯体、設備、再エネという対策の順番だろう。現状からす

ると、ドイツ国内の設備メーカのロビー活動が強いことと、古くなった設備を効率の良いものに交換

する対策が、例外を除いて非常に高い経済性をもっていることにより、設備から入るという消費者が

少なくないことは間違いない。設備だけで留めておくのならば問題にはならない。残念ながら、省エ

ネアドバイスで依頼主から頻繁に聞くのが、「ボイラーは2年前に換えたので次は断熱でもと考えて

いる」というものだ。簡単に表現すると、スリムになって綺麗になりたい人間が、先に格好のいい服

を買ってからダイエットし、いい服が大きすぎるというのと同じである。つまり、100のエネルギー

を必要としていた家に合わせて設備を交換し、躯体の対策をすると30しか必要がなくなったという

ものだ。規模の大きな設備で少しずつ温熱供給すると効率は悪い。おまけに設備自体も高額である。

これも全体で知っているアドバイザーでなく、とりあえず設備業者に聞いてみたところ、「効率の高

い設備がいい」という回答をもらったことが原因であるが、それも当然の結果だ。

 

躯体と設備への対策の後は再エネでのエネルギー供給になるが、その3点セットでは補えないのが、

使用者、すなわち住人の住まい方である。省エネ自動車でも急発進、急停止を繰り返すような運転の

仕方では燃費が悪くなる。これは住宅でも共通している。省エネリフォーム後の住宅は、これまでの

住まい方と同じでは通用しないのだ。設備の設定から換気の仕方まで全てが異なってくる。それを間

違うと省エネにならないだけでなく、建物や設備を傷めることにもなりかねない。

 

省エネリフォームは新築よりも複雑である。これはすでに建物と設備が存在し、各々の状態が異なる、

対策をするしないの選択ができるためにかえって難しい。また、集合住宅になると、住人との折り合

いも必要となる。所有者一人を納得させるだけでも多様な情報に精通していなければならないという

のに、家主が住人を説得するためにはさらに材料が必要となる。一つ一つのリフォーム案件だけで見

ると正しい情報でポジティブな結果をだすかどうかということのみに焦点があたるが、リフォーム推

進政策全体からみれば、間違った情報が原因で少しでも悪い噂が広まれば、それを塗り替えるまでに

は相当な時間と労力が必要となる。ドイツ連邦政府は省エネリフォームの補助政策に力をいれている

が、正しい情報の普及もさらに強化が必要と考えられる。これは日本でもこれから類似した課題が要

求されることとなる。

 

【永井宏治 プロフィール】

ドルトムント工科大学(TU Dortmund)Diplom過程修了後、エコセンターNRW入社。

ドイツ国内で住宅の省エネ化、連邦国土交通省企画の研究プロジェクト、持続可能な

都市計画に関するコンサルティングを行う一方、日本国内の住宅エネルギーパス作成

用プログラム開発参加の他、持続可能な建築・都市やエネルギー政策に関するセミナ

ー等を行っている。

 

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╋■┛【Ⅳ】これからのセミナー・研修会のご案内

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一般社団法人日本エネルギーパス協会からのお知らせ

~エネルギーパス資格認定講習のご案内~

 

 

【本研修の内容】

住宅の省エネルギー化の気運の高まりにより、EUでは「住宅の省エネ性能」を共通の

「ものさし」で評価することが進められています。

 

ドイツでは段階を経て2008年に義務化された、ISO基準に基づいたエネルギー評価結

果の証明書、それが「エネルギーパス」です。

「エネルギーパス」では、家の燃費性能を定量的に表示することにより、その家の省

エネ性能を一目瞭然でお客様に伝えることができます。

 

本研修では、日本版エネルギーパスの算出プロセスを理解することと、計算ソフトを

駆使して自身でエネルギーパスの発行、及び省エネ建築物の設計・施工ができるよう

になることを目的とします。研修終了後、所定の手続きにより、日本エネルギーパス

協会の認定ライセンス取得、計算ソフトの利用ができるようになります。

※研修は全2回全ての受講が必須です

 

【今後の研修開催予定】

7月16日(火)17日(水)  東京

9月17日(火)18日(水)  大阪

10月15日(火)16日(水)  東京

10月22日(火)23日(水)  大阪

11月19日(火)20日(水)  東京

1月21日(火)22日(水)  東京

2月18日(火)19日(水)  大阪

 

東京は日本エネルギーパス協会セミナールームにて行います。

その他に関しては会場が未定ですが、駅付近となる予定です。

上記日程は受講人数が7名以下の場合中止となる可能性があります。

詳しくは日本エネルギーパス協会のWebサイトをご確認下さい。

 

【受講費】

100,000円/1人(会員価格)

★その他の割引

1社で10名以上で受講する場合や、地域の工務店のお仲間と一緒に10名以上で受講す

る場合は予定開催地域以外での出張研修会を開催致します。お気軽にご相談下さい。

 

【お問合せ】

一般社団法人日本エネルギーパス協会

TEL 03-6205-4492

URL: http://energy-pass.jp/

 

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株式会社日本エネルギー機関(JENA)

代表取締役 中谷哲郎 責任編集

東京都港区新橋2-5-6

TEL03-3591-7080

FAX03-5157-3178

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