省エネ断熱改修普及のための日独連絡協議会 メールマガジン 【6月15日号】

■□■□-------------------------------■□■□

                 省エネ断熱改修普及のための日独連絡協議会

                     メールマガジン2013.6.15  VOL.2

□■-----------------------------------■□

日本における省エネ断熱改修マーケットの確立を目指して!

本日のメニュー

【Ⅰ】日独連絡協議会 代表 中谷哲郎 セミナーレポート

【Ⅱ】ドイツ環境ジャーナリスト 村上敦のコラム「紫電一閃」

【Ⅲ】日本エネルギーパス協会 今泉太爾のセミナー実況中継「エネルギーパスって何?」

【Ⅳ】これからのセミナー・研修会のご案内

---------------------------------------

※当メールマガジンは、当協議会会員以外に株式会社日本エネルギー機関、一般社団

法人日本エネルギーパス協会、一般社団法人クラブヴォ―バン会員の皆様にも無料配

信しております。配信停止希望の方はお手数ですが、本メルマガ末尾の配信停止・変

更箇所をご覧ください。

■╋■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

╋■┛【Ⅰ】日独連絡協議会 代表挨拶 中谷哲郎 セミナーレポート

■┛━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

省エネ改修関連の補助金解説セミナーを開催、130人以上来場

当協議会の代表の中谷哲郎です。当協会主催で5月30日に「省エネ改修関連の補

助金解説セミナーを開催いたしました。当日は、住宅業界関係者の方を中心に、13

0名以上の方にお越しいただきました。

講演いただいたのは、

①      経済産業省 資源エネルギー庁省エネルギー対策課様による「既存住宅における高

性能建材導入促進事業」について。

http://www.zero-ene.jp/

②      国土交通省 住宅生産課様による「住宅・建築物省エネ改修推進事業」について。

http://www.kenken.go.jp/shouenekaishu/

③      林野庁 木材利用課様による「木材利用ポイント制度」についてでした。

http://mokuzai-points.jp/

それぞれの詳細は各省庁のホームページをご覧ください。

ドイツでは、最も経済効果の高い施策として評価されているのが、省エネ改修の補助

制度です。なぜなら地域経済に波及効果が抜群に高いからです。

◆ドイツでは12倍の経済効果を発揮した省エネ改修補助制度

ドイツ国土交通省がまとめたこんな面白いデータがありました。2000~2010年の10

年間で、省エネリフォームに対する補助金や低利子融資などで累計1兆円を投入しま

したが、なんと12兆円程度の省エネ改修工事が建設業市場に出て、毎年40万人程度

の雇用を生み出したというのです。国は、経済波及効果をマーケットに与えただけで

なく、誘発された民間投資12兆円の19%、約2.3兆円を付加価値税(消費税)で獲

得、投資した2倍のお金を手にすることができたのです。

私ども「省エネ断熱改修普及のための連絡協議会」の目指すゴールはただ一つ、我

が国日本においても、ドイツと同じ規模の「省エネ断熱改修」市場を確立することで

す。

 日本においてもドイツ同様の経済効果を生む省エネ改修を普及させるために、スタ

ートダッシュが加速する補助金は有効です。今後同様の補助制度が拡充していくには

我々がもっとこれらの制度を理解し、活用する必要があります。

みなさん、どんどん活用いたしましょう。

■╋■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

╋■┛【Ⅱ】ドイツ環境ジャーナリスト 村上敦のコラム「紫電一閃」

■┛━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 当メールマガジンの目玉連載がドイツ・フライブルク在住の環境ジャーナリスト村

上敦氏のコラムです。前回に続いて、ドイツで今、議論が巻き起こっている「電気で

熱を作ることは正しいのか?」というテーマに切り込んでもらいます。(中谷哲郎)

第2話

エネルギーシフトが進むドイツにおいて電気で熱は正論か?

(その2)

◆2022年までに原子力、2050年までに化石燃料を必要としない社会へ

ドイツではエネルギーシフトが進んでいます。エネルギーシフトとは、2022年までに

原子力を、2050年までに化石燃料をエネルギー源として必要としなくなる社会を推し

進める一大政策、一大社会運動、一大経済改革のことを指しています。具体的には20

50年までにドイツ社会が必要とするエネルギーを省エネによって半減させ、残り半分

の最低限必要なエネルギーは、再生可能なエネルギーによってまかなうという内容です。

すでに、電力消費量における再生可能エネルギー発電の割合は、2012年の統計では21

%になり、1990年の水力発電による3%とは隔世の感があります。しかし、その影響で、

エネルギーについての定義そのものが、再度議論を要するような時代へと突入すること

になりました。複雑な話になりますが、箇条書きで状況を説明してゆきましょう。

・もともとドイツがエネルギーシフトをはじめた大義名分は、欧州における気候温暖化

対策の議論に基づいています。つまり、原発はもとより、化石燃料も必要でない社会を

形作り、温室効果ガス(とりわけCO2)の排出量を2050年までに80~95%削減(90年

比)することが目標とされています。

・こうした議論の中、EU内でのエネルギー、省エネなどに関わる法整備では、CO2を

原単位とした構造が出来上がりました。

・例えば、すべてのエネルギーに関わる政治的な、あるいは法的な目標値は、最終的に

その場で消費される「消費エネルギー」、あるいは「最終エネルギー」ではなく(ある

いは並べる形で)、その消費されたエネルギー量を確保するために必要であったすべて

の投入されたエネルギー量を取りまとめた「一次エネルギー」に表示・制度が作られて

います。

・異なるエネルギー種を消費した際に比較できるように、その「一次エネルギー」を計

算するためには、CO2を元にした換算手法がEU政令で作られています。例えば、ドイ

ツにおいては、ガソリン、軽油、都市ガスなど化石エネルギー資源を精製したものを使

用した際には、一次エネルギー換算係数は1.1に、つまり、その場で1kWhを消費した場

合には、それを採掘し、精製し、それをそこまで運んで準備するために追加で0.1kWhの

エネルギーが社会において消費された(CO2が排出された)とみなすわけです。

・ちなみに薪ボイラーや木質ペレットなど、木質バイオマス資源の場合の一次エネルギー

換算係数は0.2です。チェーンソーで伐倒、集材し、運搬し、加工・乾燥、配達するのに、

その木の持つエネルギーよりも、CO2で0.2分が追加で排出されたと考えるわけです。こ

れらは、EU政令で指定された計算方法に基づき、ドイツ工業規格や〈省エネ法〉、〈省エ

ネ政令〉などで決められています。

・問題は電力です。以前は、ほとんどの電力が石炭と褐炭で作られていたため、発電所の熱

効率などまで加味し、ドイツにおける電力の一次エネルギー換算係数は3.7でした。火力発

電所の熱効率が多少なりとも改善され、原子力や天然ガスによる発電割合が増加すると、こ

の一次エネルギー換算係数は、3.3となりました。時代の移り変わりとともに、この数字は

3.0となり、2.7となり、2009年の〈省エネ政令〉の大改正時には、再生可能エネルギーの

割合増加のため、この数字は2.6と定義されています。

・ここまでは、過去の話です。電気を1kWh作るために、その約3倍の熱エネルギーを必要

とすることから、「バターをチェーンソーで切る」のごとく、電力は高級なエネルギー源で

あり、30~60度ぐらいの低温での熱利用には使用しないという社会の合意が出来上がった

わけです。それゆえ、蓄熱暖房機が気候温暖化対策の上では悪とされ、排除の時代がはじま

ったわけです。

◆再生可能エネルギーの普及とともに低下する電力の一次エネ換算係数

・しかし、全体の電力の1/4を再生可能エネルギーでまかなう時代が到来します。ドイツ政

府は2020年までに消費電力のうちの再生可能エネルギー発電の割合を35~40%とする目標

を打ち立てており、それはこれまで順調に進行しています。来年改正される予定の冒頭でも

お話した〈省エネ政令〉改正の議論では、電力の一次エネルギー換算係数は、2013年に2.0

に、2016年には1.8にまで低減する予定です。

・すると、まず、APFで3.0程度の電力ヒートポンプを使用する場合には、高級なエネルギ

ー源である電力であっても、30~60度ぐらいの低温での熱利用をすることは、気候温暖化

対策になるのではないか?、逆に天然ガスなどを直接燃焼させるボイラーによるセントラル

ヒーティングよりも、電力+ヒートポンプの床暖房のほうを推進するべきではないかという

議論が出てきました。

・同時に、冒頭の蓄熱暖房機の禁止措置の解禁にまで話は広がります。蓄熱暖房機はヒート

ポンプと異なり、1kWhの電力を1kWh以上の熱には変換しませんが、電力需要が小さく、太

陽光や風力発電が活発な時間帯に、スマートグリッドなどを活用して、ここに熱の形で「蓄

電」しておくことで、ドイツの目下の懸案事項である系統安定化対策になるのではないかと

いう議論です。電力大手に言わせると、蓄熱暖房機までが(これまで自らが散々反対してき

た)エネルギーシフトの推進に貢献するわけですね。

◆2020年蓄熱暖房機の解禁で改めて思うこと

ということで、ようやく話がつながりました。どちらにしても、反発が大きすぎるため今す

ぐに蓄熱暖房機が解禁されるわけではないものの、もう少し先の時代のために、ドイツの4

大電力大手は総掛かりでこの抜け道を模索していました。その結果、ロビーの圧力によって

連邦議会の建設委員会の保守勢力が手なづけられ、冒頭の2020年に蓄熱暖房機の解禁の決

議へとつながったわけです。

さて、さて、このコラムのオチですが、そんなつまらないことをグダグダと議論しているよう

に見えるドイツの国会においても、エネルギーシフトの本筋は「省エネ」だというお話。ドイ

ツには新築や改築の際、最低限達成しなければならない、つまり指定された性能以上の躯体で

ないと新築許可などがおりない罰則付きの省エネ性能のミニマムスタンダードが存在します

(省エネ政令によって指定)。

このミニマムスタンダードは、今後も年々より一層厳しくなり、現在の省エネ政令での燃費基

準は(日本式の計算方式がないので無理やりながら)ざっとQ値に換算してみると1.3前後。

これは2014年に12.5%、そして2016年にはさらに12.5%厳しくなる予定ですから、2016年以

降のドイツではQ値1.0以下の建物しか作られなくなります。また、2021年1月1日からは、

EU内ではゼロ・エネルギー建物以外の新築が認められなくなりますから、躯体性能の上でもQ

値1.0を大きく下回る建物以外は、住宅用途でも、非住宅用途でも、建設は禁止されることに

なります(おおよそパッシブハウスのレベルのみとなる)。

つまり、建物の躯体性能の向上、省エネさえきっちりやっていれば、そもそも必要となる暖房

エネルギーはそもそも些少なことであり、こうした設備について重箱の隅をつつき合っている

政党&ロビー談義を半ば呆れつつも、楽しんで見ていられます。日本では、建物の温熱の機器

や設備のお話は、すでに十分躯体性能が向上してからでないと議論する価値がそもそもありませ

んし、電力の系統安定化やスマートグリッドのお話は、電力の2、3割をすでに新エネで供給で

きるようになってからでないとこれまた議論の意味がありませんので、このようなドイツのレベ

ルのお話は、今のところお楽しみいただけません。近い将来に、そんなレベルの話が日本でも

できるようになることを願いつつ。

ドイツ・フライブルクにて ジャーナリスト 村上 敦

村上敦プロフィール http://www.murakamiatsushi.net/

ドイツ在住の環境ジャーナリスト、環境コンサルタント。日本で大手建設会社勤務

後、環境問題を意識しドイツ・フライブルクへ留学。フライブルク地方市役所建設局

に勤務の後、フリージャーナリストとしてドイツの環境施策を日本に紹介していま

す。南ドイツの自治体や環境関連の専門家、研究所、NPO法人などのネットワーク

も広い。

■╋■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

╋■┛【Ⅲ】今泉太爾のセミナー実況中継 「エネルギーパスって何?」

■┛━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日本エネルギーパス協会の代表理事に就任した、今泉太爾氏。同氏が最近開催し

た「エネルギーパス」に関する解説セミナーの模様を実況中継します。「エネルギ

ーパスって何?」という疑問に答えていただきました。(中谷哲郎)

第2話

「エネルギーパスって何?」

◆エネルギーパス説明の前に知ってほしい「日本の住宅のココがオカシイ」

日本で戦後に建てられた木造住宅の寿命は約30年、国土交通省の統計データでは

26年とされています。色々な統計データがありますが、おおむね30年で建て替え

られているのが一般的。では世界基準で見るとどうでしょうか?アメリカ60年、ド

イツ80年、イギリス100年、日本の2〜3倍は当たり前。ちなみにドイツは80

年ですが、統計上ですと第2次世界大戦で大半が焼失してしまったからだそうで、実

際には築数百年で現役の建物が数多く存在しています。

 さて、ではなぜ日本の家だけこんなにも寿命が短いのでしょうか?

デザインやコストダウン、集客手法などの目先の物事ばかりに目が行ってしまい、長

持ちするような設計や長耐久建材の開発・使用に取り組む業者は少数派。世界的に見

てもまれなほど高温多湿な環境を持つ日本で、長持ちする家を造ろうと考えたら、そ

れなりの手間とコストがかかります。

しかし、長持ちさせる意味を顧客に説明することが難しいため、住宅の長耐久化に消

極的です。反対に、家を安く作る事だけを考え、長持ちしない安い部材を使い、技術

の未熟な職人に手間を削らせ、工期を詰めて造れば実現可能であり、安売りには説明

も不要。残念なことに最近では初期コストは安いが短命な家造りが多く見受けられま

す。

日本では少子高齢化が進みいよいよ人口減少期に入り、住宅購入者が減少して需要

が縮小しています。そんな中で短命なローコスト住宅が量産されると、需要と供給の

バランスが崩れ、市場原理により地域全体で住宅価格が下がり続けます。これを古典

経済学ではワルラス的調整と呼びます。住宅の長耐久性や省エネ性能などを犠牲にし

たコストダウンと、行き過ぎた新築至上主義は、ほんの一握りの建設業者の利潤や住

宅購入者の初期コスト低下のために、社会全体の住宅所有者の資産価値を犠牲にする

という不合理な活動ともいえます。しかも当の本人も燃費やメンテ費用などのランニ

ングコストで結局経済性も無いという落ちまでついているため、まさに「安物買いの

銭失い」の代表といえます。

そのためにも、エネルギーというランニングコストを建てる前から明らかにできるエ

ネルギーパスという制度を活用して、まずは良い新築住宅を供給していく。その次に

今あるストックを良いものに変えていく。そのために良し悪しを計る共通の物差しが

どうしても必要となるのです。

今泉太爾プロフィール

日本エネルギーパス協会代表理事。不動産仲介業を行う中で、築年数で価値が決まっ

てしまう日本の建物評価制度に疑問を持ち、世界基準のサスティナブル建築・省エネ

住宅をつくるために、2011年から「低燃費住宅」を全国展開。2012年には国土交通省

不動産市場流通活性化フォーラム委員、住宅のエネルギー性能の表示のあり方に関す

る研究会委員、長野県住宅性能表示委員を務めた。

■╋■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

╋■┛【Ⅳ】これからのセミナー・研修会のご案内

■┛━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

一般社団法人日本エネルギーパス協会からのお知らせ

~エネルギーパス資格認定講習のご案内~

【本研修の内容】

住宅の省エネルギー化の気運の高まりにより、EUでは「住宅の省エネ性能」を共通の

「ものさし」で評価することが進められています。

ドイツでは段階を経て2008年に義務化された、ISO基準に基づいたエネルギー評価結

果の証明書、それが「エネルギーパス」です。

「エネルギーパス」では、家の燃費性能を定量的に表示することにより、その家の省

エネ性能を一目瞭然でお客様に伝えることができます。

本研修では、日本版エネルギーパスの算出プロセスを理解することと、計算ソフトを

駆使して自身でエネルギーパスの発行、及び省エネ建築物の設計・施工ができるよう

になることを目的とします。研修終了後、所定の手続きにより、日本エネルギーパス

協会の認定ライセンス取得、計算ソフトの利用ができるようになります。

※研修は全2回全ての受講が必須です

【今後の研修開催予定】

7月16日(火)17日(水)  東京

9月17日(火)18日(水)  大阪

10月15日(火)16日(水)  東京

10月22日(火)23日(水)  大阪

11月19日(火)20日(水)  東京

1月21日(火)22日(水)  東京

2月18日(火)19日(水)  大阪

東京は日本エネルギーパス協会セミナールームにて行います。

その他に関しては会場が未定ですが、駅付近となる予定です。

上記日程は受講人数が7名以下の場合中止となる可能性があります。

詳しくは日本エネルギーパス協会のWebサイトをご確認下さい。

【受講費】

100,000円/1人(会員価格)

★その他の割引

1社で10名以上で受講する場合や、地域の工務店のお仲間と一緒に10名以上で受講す

る場合は予定開催地域以外での出張研修会を開催致します。お気軽にご相談下さい。

【お問合せ】

一般社団法人日本エネルギーパス協会

TEL 03-6205-4492

URL: http://energy-pass.jp/

□――――――――――――――――――――――――――――――――――――■

■登録情報の変更、

退会

本メールマガジンをお読みいただき、誠に有難うございます。配信停止・配信先の

メールアドレス変更につきましては、以下のアドレスに【配信停止】とご記入いただ

きご返信ください。

support@jena-web.jp

■その他、ご不明点・お問合せ等に関しましては、以下のメールドレスまでご連絡く

ださい。

→ support@jena-web.jp

□――――――――――――――――――――――――――――――――――――■

発行元:省エネ断熱改修普及のための日独連絡協議会    事務局

株式会社日本エネルギー機関(JENA)

代表取締役 中谷哲郎 責任編集

東京都港区新橋2-5-6

TEL03-3591-7080

FAX03-5157-3178

※当メールマガジンの著作権はすべて当協議会に帰属します。無断転載・無断利用を

固くお断りいたします。

□――――――――――――――――――――――――――――――――――――■